ながよ光彩会は、6月23日より新体制がスタートしました。
今回ご紹介するのは、4月よりながよ光彩会の理事長に就任した貞松徹さん、そして新たに理事となった5名の職員です。
理事長就任に伴うストーリーや想いについて貞松さんへの個人インタビューを実施すると共に、新体制で就任した他5名の理事とのクロストークを行いました。ながよ光彩会の今後の展開や、理事同士のリアルな対話の様子をダイジェスト版でご覧ください。
※貞松さん以外の理事5名については、それぞれの人物にフォーカスした記事を別途作成してご紹介します。
ながよ光彩会の“ふくし”を継承する
貞松さんは、ながよ光彩会の新体制を構築するにあたって、全ての理事は職員から選出しました。
理事長の貞松さんと、新たに理事に就任した5名をご紹介します。
それぞれが専門とする分野を担当し、同分野の職員やフロアを統括します。
畑村竜太さん 担当:公益事業(ひととまちとくらしの学校・み館)
貞松徹さん 担当:統括責任者(企画・運営)
山口香里さん 担当:高齢者福祉事業(看護・保健部門)
甲斐暁子さん 担当:ユニバーサル食事業(栄養・カフェ部門)
中山資子さん 担当:高齢者福祉事業(介護部門)
原田竜生さん 担当:障がい者福祉事業・介護のしごと魅力発信事業
理事6名の構成は男女3名ずつとし、中にはパート職員が含まれていたりなど、ダイバーシティを尊重した次世代体制をデザインしています。
ーまず、新しく貞松さんが理事長に就任した経緯について、改めてお聞かせください。
貞松「2022年4月より理事長を拝命して、今は2ヶ月と少しが経ったところです。前・理事長の前田さんは、この法人を誰に託すべきかを考えた際に、『立ち上げからずっと一緒に走ってきた貞松に任せたら、この物語を継承してくれるだろう』と言ってくれました。これだけの基礎、土壌を作ってきてくれた上で、また新たなことにチャレンジしてほしい、というメッセージと共にバトンを渡してくれました」
理事に「職員」を任命した理由とは
そんな中で、法人の体制をどうすべきか考えた貞松さん。法人の今までの変遷や方向性を一番理解してくれているのは、理事や評議委員です。
もちろん、そのままの体制で進んでいくことも選択肢にはありましたが、深く考えていく中で「理事会のメンバーも、全て職員で構成しよう」という結論に至りました。
ーこの記事の大きなテーマにもなりますが、理事を職員の中から選出したのはなぜでしょうか?
貞松「これも、前理事長から言葉をもらっていました。『貞松くんが思う、理想の体制を整えることが大切』だと。自分の理想ってなんだろう?と考えた際に、私とフラットに話せる関係性の『職員』が役員であることが一番いいなって思ったんです」
現在ながよ光彩会では、みんなのまなび場 み館を会場に、月に一度の職員向け誕生日会やスナック企画を実施しています。そこでは職員同士の接点が生まれ、リラックスした楽しい時間を過ごされています。
貞松「仕事以外の場面で職員との交流を深めていく中で、少しずつみんなの人となりが分かってきました。あんな時間を過ごしたからこそ、『理事も職員から選びたい』という気持ちが芽生えたんです」
職員同士はもちろん、特にこの6名の理事メンバーは、仕事の話もプライベートな話も気兼ねなくやり取りができる空気感がありました。
また、貞松さんがながよ光彩会を引っ張っていく上でも、自分自身への“セーフティネット”として理事会メンバーにも居てもらいたいと語ります。
貞松「これは初心表明の中でも職員たちに伝えたのですが、『フラット』と『ダイレクト』は継続して大事にしていきたいキーワードです。私はいま44歳で、世間的に見れば比較的若い理事長だと思います。頼りなさ、危うさを感じさせる一面もあるかと(笑)それに、私は“臆病”なんですよ」
ーええっ、そうなんですか!?臆病は意外です……!
貞松「自信が無い、という意味ではないんだけどね。自分が発した言葉に対して、あとから『この発言は誰かを傷つけているんじゃないか、怒らせているんじゃないか』ってよく考えるんです。だから、理事は自分に対してもフラットに、そしてダイレクトに意見してくれる存在じゃないと、いつか間違ってしまうかもしれない。間違えたくないんです……!(笑)」
貞松さんと距離の近い「職員」という立場の中から理事を選んだのは、意外にもこんな理由がありました。
例えば、今回就任する理事の中には、パート職員である甲斐さんがいます。ユニバーサル食事業を担当するとともに、同じパート従業員たちの声を貞松さんに伝える役目もあるのです。現場の声に耳を傾けたい、そして職員を信頼する貞松さんの気持ちが伝わってきます。
私たちはちゃんと同じ方向を見れているのか?
選出された理事の5名は、個性的なキャラクターや専門分野を持っています。インタビューの後半は、貞松さんがそれぞれのメンバーに対して、理事としてどんなことを期待するのかを伺いました。
そして、貞松さんへの個人インタビュー終了後には、み館にて「理事6名全員参加型のクロストーク」をセッティング予定。理事全員での対話の場を設けた理由を、貞松さんはこう語ります。
貞松「今回、新体制への移行に伴って、1つの内省があって。各理事には、私が考えていることを伝えた上で検討してもらって、OKをもらったので就任してもらっています。ただ、このままでは私の考えをトップダウンで降ろしているだけのような構図になってしまっているかもしれない。それぞれの理事が、本当にやりたいこととズレがないかどうか、きちんと対話をした上で確認をしたいと思っています」
このような考えから、貞松さんのインタビュー中はビデオ通話を立ち上げ、理事5名には別の場所からリアルタイムでお話を聴いてもらいました。
また、1対1での対話はできていても、6人全員で面と向かってしっかりと対話する機会はまだありませんでした。これから法人をリードし、新しいことにチャレンジしていくメンバー。一度しっかりと腹を割って言葉を交わす時間が必要でした。
貞松「みんなに『信頼』を送るのと同時に、ついついこちらの主観が混じった『期待』まで一緒に渡してしまう。いま、画面の向こうで私たちのお話を聴いてもらっていると思うけど、この後のクロストークで貞松の言葉をどう受け取っているのかを聴いてみたいです。『思い込みすぎ!』って言われるかもしれないね(笑)」
そうして、その答え合わせをするべく、理事5名が待つみ館へと移動しました。
輪になって、1人ずつ丁寧に対話を深める
貞松さんと理事メンバーとで合流して行ったのは、対話型ワークショップの一つ「フィッシュボウル」です。
中央に椅子を2つだけ置き、その周りを囲うように輪になって他の椅子を並べます。
そして、2つのボールを用意しました。
進行中、発言できるのはボールを持っている人だけ。
ボールを持っている2名は、真ん中の椅子に向かい合って座り、対話をします。
そして他のメンバーは周りの椅子に座り、真ん中の2名が対話している様子を傾聴します。
持っているボールは別の人に手渡されたり、発言したい人が自ら名乗り出たりして、真ん中の2つの椅子に座る話し手は流動的に変化していく、そんなワークショップです。
「一体どうなるんだろう……?」という不安な空気の中、フィッシュボウルがスタート。最初は、ファシリテーターと理事の5名が順番にお話をしていきました。
1人目 山口香里さん 担当:高齢者福祉事業(看護・保健部門)
看護師の山口さんは、看護・保健分野を担当し、介護職員の医療や薬の知識・対応力の向上を図ります。また、山口さんにとって「看取り」も大きなテーマ。み館で職員や地域住民向けに「エンディング活動」の普及にも取り組みたいと意気込みます。
山口「家族の死と向き合うことで、人間の感情が変化する・動くことに私はすごく興味があるんです。昔から、仕事で看取りを経験することが多くありました。だから、職員の皆さんにも、看取りとしっかり向き合ってもらうことで、得られるものがあるって信じています」
「看取り」という難しいテーマについて、知的好奇心を持ってポジティブに向き合う山口さん。日頃から入居者さんのご家族と積極的にコミュニケーションを取ることで、話しやすい関係性づくりを意識しているようです。
2人目 中山資子さん 担当:高齢者福祉事業(介護部門)
貞松さんと同じく、かがやきの立ち上げ時からずっと法人を引っ張ってきた中山さん。これまで中山さんは、看取りや栄養、小規模多機能など施設全体のマネジメントを担ってきました。
今後は他の理事と業務を分担し、中山さんが大切にしたい理想のケアや看取りを浸透させていく方針です。
中山「私は、『やさしさが後から身につくのは難しい。でも、やさしささえあれば、知識や技術はいくらでも付いてくる』ものだと思っていて。これは20代の頃に経験した私の家族の出来事が原体験になっています。
(自分の家族を預ける時、)『職員さんは、優しければそれでいい』。かつて私の母からもらった言葉です。本当に大切なことって、ただそれだけのことに尽きると思うんです」
責任感がある中山さんの言葉のバックグラウンドには、とてもやわらかな“やさしさ”がありました。施設から新型コロナウイルスのクラスターが発生した時など、ピンチに追い込まれた時には自ら現場で対応する強さも兼ね備えています。
言葉と行動力で、中山さんが理想とするやさしさのあるケアが、職員に伝わっていく過程を見守りたいと思います。
3人目 原田竜生さん 担当:障がい者福祉事業・介護のしごと魅力発信事業
ながよ光彩会が新たに取り組む、障がい者福祉事業の立ち上げ・マネジメントを担う原田さん。かがやきの1階にある小規模多機能のマネージャーも務め、障がい事業とも融合・作用させていくことを期待されています。
原田「体育会系なので、昔は『自分が勝ちたい』『おれがゴールを決めたい』っていうタイプでした。でも独りよがりで突っ走ってしまって、周りとの溝を生んでしまったことも。学生時代に彼女から『重い』とフラれたこともありました(笑)それから段々、他人にゴールを決めてもらう気持ち良さを知ったんです。だからチームビルディングは好きなんですよね」
原田さんは法人のメンバーになってからまだ数ヶ月と日は浅いですが、抜群のコミュニケーション能力で、早くも職員皆さんと溶け込んでいる様子。
法人の中で共に障がい事業を立ち上げていく仲間を募り、事業の可能性を探りながら、かがやき拠点を「つくるば(=生産の場)」・み館拠点を「とどけるば(=提供の場)」として、福祉の現場で作られたものを地域にお裾分けしていくことを体現していきます。
4人目 甲斐暁子さん 担当:ユニバーサル食事業(栄養・カフェ部門)
3月よりフードソムリエとして法人に仲間入りしてから間もない甲斐さん。食の充実や楽しみの創出を通じて厨房と入居者との距離を近づけることや、障がい事業と連携したカフェを運営することによって“ふくし”を地域に開くことの実現を目指します。
甲斐「ご縁でここに入らせてもらって、ずっとやりたかったことが実現できそうですごく嬉しいんです。まずは厨房に入らせてもらっているので、そこで看取りケアが必要な入居者さんに、私のおすすめのスープを飲んでもらえないかなって提案させてもらったりとか。食べること、美味しいなって思うことって、幸せを感じられると思うんです」
野菜ソムリエとしての知識・経験を持ちながら、気になる生産者の元には直接訪ねに行ってしまうような直感タイプなのだとか。そんな好奇心に満ちた行動力で、食材や生産者に関するストーリーを福祉の現場に届けてくれる存在となってくれそうです。
5人目 畑村竜太さん 担当:公益事業(ひととまちとくらしの学校・み館)
先日、畑村さんの功績により、ながよ光彩会はICTロボット補助金の獲得が確定しました。畑村さんには、福祉現場におけるICTの利活用をさらに進めてもらうこと、職員のICTリテラシー向上に貢献してもらう方針です。
畑村「僕は職員間のコミュニケーションこそ、一番大事にしたいことなんです。基本、ICTをそこまで信じてないんですよね(笑)本当にやりたいこと、大切にしたいことを守るために、テクノロジーを使って効率良くすればいい。職員ともしっかり対話をして、何に困っているか、ICTの活用で改善される可能性がどこにあるかを探っていきたいですね」
システムエンジニアとしてのキャリアを持ちながら(持っているからこそ)、人と人とのアナログなコミュニケーションに価値を見出している畑村さん。現在、み館拠点のマネジメントや、「ひととまちとくらしの学校」校長を務めていますが、今後はより法人内の職員向けの研修に専念してもらうことになっています。
新体制に向けて、心を通わせていく時間に
同じ施設の中で働いていても、見えている世界や風景は少しずつ異なる。
同じ法人の中で「ふくし」を共創していく仲間であっても、バックグラウンドやここに至るまでのストーリーは大きく異なる。
外見や普段の様子だけでは決して分からない、5名それぞれの人となりがじわじわとこの場に現れてきました。途中、メンバー同士での質問や対話も起こり、ライブ感のあるセッションが深まっていきます。
最後にボールは貞松さんの手に渡り、中央の椅子へ。
貞松「みんなに1人ずつ聴いていきたいんだけど、いいかな? さっき私が1人で勝手に喋ってたやつって、合ってます? それが不安……(笑)」
ー“臆病な貞松さん”の顔をしていますね(笑)
そんな貞松さんのリクエストから、ファシリテーターは貞松さんにバトンパス。貞松さんを相手に、理事のメンバー5名がもう一度順番にめぐっていきました。
「新しい事業を始めるときは、いつも畑村さんに助けてもらってた。ようやく、畑村さんが本当にやりたいことをやってもらえる環境を作れそうかな?」
「他の理事の人たちに各分野を任せることで、中山さんに今まで乗っかっていた荷物は減りそう?」
貞松さんは1人ずつ、1個ずつ、確かめていきました。
それは単なる“業務内容のすり合わせ”ではなく、“心から通じ合いたい”という想いに満ちており、理事メンバーへの深い眼差しが向けられていました。
貞松さんは対話を経て、職員や今後の核となる理事メンバーの「やってみたい!」をプロデュースしていきたい、という考えを改めて強くしました。また、それには各理事が現場の声をどれだけ集められるかにもかかっていると語ります。
貞松「たとえ投資が必要な事業だったとしても、この6人の合意形成が取れていて、想いが固まっていれば何の問題もないです。私は、この6人が共感するものだったら必ず成功すると思うんですよね。『よし、行こう』とか『いや、今は苦しいからやめておきましょう』といった判断ができるように対話を重ねたいし、フラットな理事会でありたいです」
理事には、すでに何年も共に過ごしてきたメンバーもいれば、まだ法人に仲間入りしたばかりの人もいる中で、ながよ光彩会の新体制がスタートしました。これから始まっていくながよ光彩会の「ふくし」は、さらに多様な彩りをまとって広がっていきそうです。